EES(出入国管理システム)と
ETIASの関係

公開日: 2026年5月20日更新日: 2026年5月20日

EESとは何か

EES(Entry/Exit System、出入国管理システム)は、シェンゲン圏の外部国境を通過する非EU市民の入出国を電子的に記録・管理するシステムです。従来のパスポートへのスタンプ押印に代わり、デジタルデータとして入出国記録を一元管理する仕組みです。

EESの主な目的は、シェンゲン圏に滞在するビザ免除国の旅行者(日本人を含む)の入出国日時を正確に記録し、滞在許可日数の超過(オーバーステイ)を防止することです。現行のスタンプベースの管理方法では、旅行者が複数のシェンゲン圏の国を周遊する際に滞在日数の正確な追跡が困難でしたが、EESによってこの問題が解消されます。

EESでは、入国時にパスポート情報に加えてバイオメトリクスデータ(指紋4本と顔写真)が登録されます。これにより、なりすましや偽造パスポートによる入国を防止し、国境管理の安全性が大幅に向上します。

EESとETIASの違い

EESとETIASは、EUのスマートボーダー(賢い国境管理)戦略の2本柱として位置づけられていますが、それぞれ異なる役割を持っています。

比較項目EESETIAS
目的入出国記録の電子管理渡航前のセキュリティスクリーニング
タイミング入国時・出国時(国境で)渡航前(オンラインで)
バイオメトリクス指紋4本+顔写真なし(パスポート情報のみ)
費用無料20ユーロ
対象者非EU市民全員ビザ免除国の旅行者
データ保存期間3年間3年間(有効期間)

簡単に言えば、ETIASは「渡航前のチェック」、EESは「入出国時の記録」という関係です。旅行者はまずETIASで渡航認証を取得し、実際にシェンゲン圏に入出国する際にEESで記録が登録されます。

両システムの連携の仕組み

ETIASとEESは、eu-LISA(大規模ITシステム運用管理機関)によって統合的に管理され、以下のように連携して機能します。

  1. 旅行者がETIASを申請し、セキュリティスクリーニングを通過する
  2. 承認されたETIAS情報がeu-LISAのデータベースに保存される
  3. 旅行者がシェンゲン圏の国境に到着すると、国境管理官がパスポートをスキャンする
  4. EESシステムが自動的にETIASのステータスを確認する
  5. ETIASが有効であれば、EESに入国記録が登録される
  6. 出国時にもEESに出国記録が登録され、滞在日数が自動計算される

この連携により、国境管理官はパスポートをスキャンするだけで、旅行者のETIASステータス、過去の入出国履歴、残りの滞在可能日数を即座に確認できるようになります。

バイオメトリクス登録について

EESの導入により、シェンゲン圏に初めて入国する際にバイオメトリクスデータの登録が必要になります。日本人旅行者にとって、これは新しい手続きです。

登録されるデータ

登録のタイミング

バイオメトリクスの登録は初回入国時のみ行われます。データは3年間保存され、2回目以降の入国時には登録済みデータとの照合のみが行われるため、手続きが大幅に簡略化されます。

セルフサービスキオスクの利用

主要空港にはセルフサービスキオスクが設置される予定で、指紋読み取りと顔写真撮影を自動で行うことができます。混雑する入国審査の待ち時間を短縮する効果が期待されています。

日本人旅行者への影響

バイオメトリクスの登録自体は数分で完了しますが、EES導入直後は空港の入国審査が混雑する可能性があります。特にパリ・シャルル・ド・ゴール空港やフランクフルト空港など大規模空港では、乗り継ぎ時間に余裕を持たせることをお勧めします。

滞在日数の自動管理

EESの最大のメリットの一つが、シェンゲン圏での滞在日数の自動管理です。「180日間のうち90日」という滞在ルールの計算が、システムによって正確に行われるようになります。

従来の問題点

従来はパスポートのスタンプで滞在日数を管理していたため、以下のような問題がありました。

EES導入後の改善点

入国審査の流れの変化

EESとETIAS導入後の入国審査の流れは以下のようになります。

初回入国時

  1. 入国審査ブースまたはセルフサービスキオスクに進む
  2. パスポートをスキャンする(ETIASステータスが自動確認される)
  3. 指紋を登録する(4本指をスキャナーにかざす)
  4. 顔写真を撮影する(カメラに向かう)
  5. 入国審査官またはシステムが入国を承認する
  6. EESに入国記録が登録される

2回目以降の入国

  1. 入国審査ブースまたはセルフサービスキオスクに進む
  2. パスポートをスキャンする
  3. 指紋または顔写真で本人確認(登録済みデータとの照合)
  4. 入国が承認される

2回目以降は大幅に手続きが簡略化されるため、頻繁にヨーロッパを訪れるビジネスパーソンにとっては利便性が向上するでしょう。

日本人旅行者への具体的な影響

EESとETIASの導入によって、日本人旅行者の渡航体験は以下のように変化します。

渡航前

入国時

滞在中

出国時

パスポートスタンプの廃止について

EES導入後はパスポートへの入出国スタンプの押印が廃止されます。旅の記念としてスタンプを集めている方にとっては残念かもしれませんが、記録はすべて電子的に管理されるため、手続き上は問題ありません。

EES導入スケジュール

EESの導入はETIASよりも先行して進められています。EESはETIASの基盤となるシステムであり、EESが稼働した後にETIASが追加される形で展開されます。

EESの正式な運用開始日はまだ確定していませんが、ETIASの開始(2026年Q4)に先行して稼働することが計画されています。両システムが連動して初めて、EUのスマートボーダー戦略が完成します。

プライバシーとデータ保護

EESで収集されるバイオメトリクスデータのプライバシー保護は、EUの一般データ保護規則(GDPR)に基づいて厳格に管理されます。

よくある質問

いいえ、EESとETIASは別のシステムです。EES(Entry/Exit System)はシェンゲン圏の入出国記録を電子的に管理するシステムで、ETIASは渡航前にオンラインで取得する電子渡航認証です。両システムは連携して機能しますが、目的と役割が異なります。
はい、EES導入後は初回入国時に指紋(4本指)と顔写真のバイオメトリクスデータが登録されます。データは3年間保存され、2回目以降の入国では登録済みデータとの照合のみで手続きが簡略化されます。
初回入国時はバイオメトリクスの登録があるため、従来よりも時間がかかる可能性があります。ただし、2回目以降は電子データとの照合で手続きが効率化されるため、長期的には入国審査の時間短縮が期待されています。
はい、EESによって入出国日時が正確に記録されるため、180日間のうち90日という滞在制限が自動的に管理されます。従来はパスポートのスタンプで手動確認していましたが、EES導入後はシステムで自動計算されます。
EESに登録された入出国記録は3年間保存されます。バイオメトリクスデータ(指紋・顔写真)も同期間保存されます。保存期間を過ぎたデータは自動的に削除されます。

EESとETIAS、両方の準備を

ヨーロッパ渡航には両システムへの対応が必要です。まずはETIASの申請方法を確認しましょう。

申請手順を確認する